なぜ私たちは界面(Interface)にこだわるのでしょうか?


イノベーションを興す

「イノベーションは、社会・世界の動きと科学技術の界面から、そしてその相互作用から生まれる」
「界面を知り、想像と創造で新たな価値を生み未来を拓く」
これがインターフェイスラボの企業理念、基本的な考え方です。

界面(Interface)とは、なんでしょうか?

大辞林によれば、界面(interface)とは「互いに接触している二つの相の境界面」と定義されています。
特に固体同士の界面は固相界面と呼ばれて界面研究の重要分野となっています。最近は、単に界面といえば固相界面を指す場合が多いようです。
私自身も、長年にわたり材料デバイスの研究開発に従事してきましたが、例えばCD−RWやDVD−RWに代表される相変化光ディスクの開発にあたっては、記録層中の結晶相と非晶相の界面、記録層と保護層間をはじめ多層膜における各層界面は大変重要な研究対象でした。界面を探求し理解することが新規な機能の発現、飛躍的な性能向上には不可欠なことでした。
その過程で、物理化学的な界面だけでなく、界面をより広い視点で捉えるようになりました。物質と物質だけでなく、人と人、知と知、心と心、右脳と左脳、深層と表層、自然と人間、そして科学技術と社会等、異質な関係の間にはすべて界面が存在すると考えます。

グリーンイノベーションに向けて

かつて技術立国と言われた日本を再活性化する道を考えてみましょう。
ポイントは、常に社会に役立つ先端技術をリードし、その成果を世界に公開し貢献し続けることだと思います。
その基本的な考え方が「イノベーションは、社会・世界の動きと科学技術の界面から、そしてその相互作用から生まれる」であり、活動のコンセプトが「界面を知り、想像と創造で新たな価値を生み未来を拓く」です。また、科学技術分野に生きる多くの人々の夢は、自分の仕事が未来につながり、未来を拓くことだと思います。
一方、1999年の世界科学会議(ブダペスト)宣言、「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」は、社会のための科学という概念を明確にして、従来の科学のための科学から科学者が一歩踏み出すことを、科学者自らが宣言しました。これは、新たな価値の判断と価値の創造を目指すものでした。
それから10年以上経ちますが、日本の科学者・技術者の意識の進展は世界に比べて遅く、このままでは、急速に日本は衰退すると危惧します。

では、社会・市場が求めるものに科学技術はどう応えて行くのでしょうか?
ここで科学技術と社会の乖離現象を考察してみます。
下に描いた図は、科学技術と社会の乖離を模式的に表したものです。
人間の日常生活の基本となる“生命維持”や“衣食住”、そしてそれらを支える医薬品・医療技術や農林水産技術、食品加工技術、住宅建築技術、繊維・アパレル関連技術等との間には、社会・マーケットから見てもそれほどの乖離は感じられません。
栄養として必須なもの、趣向として欲しいもの、快適な居住環境は人間なら誰しも求め(ニーズが顕在化している)、それらを支える技術への関心度、理解度は比較的高いでしょう。
エアコン、冷蔵庫、洗濯機に代表される家電製品は、組み込み技術が進化し高度化しているとは言え、さほどの乖離は感じられません。
一方、社会の要求レベルのランクを上げて、生活の質の向上の対象となる、パソコンやデジタルテレビ、携帯電話等の情報家電製品、情報通信機器、さらに社会インフラを支えるエネルギー関連技術、と技術が高度化するに従い、技術者自身、すべての機能を理解すること自体が極めて困難になっている⇒進化すればするほど、技術は社会(人々)から遠ざかる。
技術が高度化・多機能化する速度に技術者ですら追従できなくなっています。
しかし、このこと自体は技術の進化の必然的な結果であり、大きな問題ではありません。
人々にとっては、新しい商品の使い勝手がどうスムーズなのか、何が快適なのか、といったことが分かりやすければ充分であり、故障しないこと、万が一故障しても簡単に修理してもらえ、不快な体験をしないですむことが大切なのです。
問題は、技術者がそのことを十分認識しているかどうかです。
自分が作った商品の技術的優秀さを数多くフラットに説明することではなく、それを人々が理解できるまでとうとうと説明することでもないのです。
さらに、宇宙工学やスーパーコンピュータのレベルになると、一般人の知識ではその内容はおろか、その必要性すら理解できない領域となり、基礎物理学や基礎数学にいたると極一部の専門科学者のみの対象領域となります。
科学者自身も、科学と社会との中間にたつ人々も、研究の必要性、重要性をうまく説明できているとは思えません。
このまま放置すると益々一般社会の期待や要求と科学技術の発展との乖離ははなはだしくなるでしょう。
未知のニーズの領域が故の難しさとも言えますが、科学技術に対する社会の理解と期待を得ることが大切です。
一方、宇宙の起源を知ることが人類の夢、と捉えると、基礎物理学や基礎数学は必須な学問ですし、また、巨大科学プロジェクト遂行時に生まれてくる数多くの新技術や信頼性工学の研究が、価値ある新商品を生み出し、既存商品の性能や品質・信頼性向上につながっています。
科学者も社会も、お互いの関係を理解しあうことが重要であり、そのしくみ・しかけが不充分なことが問題です。
科学者・技術者は、社会が求めているものは何か、目指すものは何か、そして科学技術に期待していることは何かを知り、自分たちはその期待に対し、どこにいるのか、何をすべきか、何ができるのかを熟考しなければなりません。
一方、社会の側も科学技術の必要性、重要性、そしてそこから生まれるモノの魅力を認識・理解し、科学技術の育成方法、活用方法に、より関心を持ち期待を高めることが望まれます。
“はやぶさ(技術)”に感動し、子供を理系に進めたい、と思う気持ちをいろいろな場面でいろいろな方法で感じてもらえる、感心と感動を生むしくみやしかけを考えましょう。
重要なことは社会と科学者・技術者との情報共有、相互理解のためにどうするか、です。
社会・市場の期待、ニーズ(潜在ニーズ、未知のニーズ)を科学技術の立場で解釈する。
同時に、科学者・技術者の気持ち・考え方・専門用語の意味を、社会・市民が理解できる言葉に“意訳”するしくみ・しかけづくりが大切です。
その具体的な取り組みとして、例えば新規な機能材料技術の研究テーマ・研究成果を社会、マーケット、産業界の視点で、筋の良い技術を目利き(価値を判断)し、社会・市場・企業への受容性向上と認知度向上を図り、開発・商品化・事業化を加速する。
産学や企業間のアライアンスを推進し、上記研究成果をより早く、速く、そして広く産業貢献、社会貢献に結実させる。

産業界においても、低価格で高機能・高品質の追及に代表される今までのものづくりから、今後は、「ものづくりの発想への共感や感動が重要な品質」になっていくでしょう。
私たち日本人が本来持っている「感性の価値」を大切に、日本の進むべき道を探っていきたいと思います。
インターフェイスラボの役割

物質と物質、知と知、心と心、そして科学技術と社会の界面を認識・理解・分析し、相互の融合を図り、想像と創造により、新たな価値を提供しつづける。
私たちインターフェイスラボの役割は、科学技術、特に日本が得意とする材料技術開発と新規事業立ち上げ経験とノウハウを基盤として、科学技術と社会の様々な界面を研究しその融合により新たな価値を創造する活動を推進していきます。
その活動の一環として、文理融合推進、産学連携推進を担います。

社会に適合するユニークな技術と技術の融合、そのために必要な人間間、企業間、異業種間、産学間の柔軟な協業活動を推進していきます。
市場の潜在ニーズ・未知のニーズを喚起できる、魅力あるユニークな技術を活用し、柔軟で迅速な商品化を企画、推進し、様々な分野への応用展開を図ります。

インターフェイスラボは、その一連の活動のプラットフォームづくりを目指しています。